ASP.NET Core Web API プロジェクトの構成⚓︎
ASP.NET Core Web API のプロジェクトには、 OpenAPI 仕様書の出力設定と例外ハンドリングのための設定、ログ出力設定をします。
OpenAPI 仕様書の出力設定⚓︎
ブラウザー上で確認できる Web API の仕様書と、クライアントコードを生成するための OpenAPI 仕様書のファイル生成ができるようにプロジェクトを設定します。
OpenAPI 出力用 NuGet パッケージの追加⚓︎
以下の NuGet パッケージを ASP.NET Core Web API プロジェクトに追加します。
NSwag 構成ファイルの追加⚓︎
[nswag.json] ファイルをプロジェクトルートに追加します。 NSwag を用いた実装コードの生成は行わないため、 OpenAPI 仕様書の生成に関する設定のみ実施してください。 [nswag.json] の設定値の詳細は、以下を参照してください。
nswag.json の設定例
[nswag.json] の設定例を示します。 コメントのある個所については、プロジェクトのプロファイルに応じて設定を変更してください。
nswag.json | |
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OpenAPI 仕様書ファイルの出力設定⚓︎
OpenAPI 仕様書のファイルがビルド時に生成されるようプロジェクトファイルを設定します。 設定方法の詳細は、以下を参照してください。
.NET 8 の場合のプロジェクトファイル設定例
.NET 8 を使用するプロジェクトの場合、プロジェクトファイルには以下のように設定することで、 OpenAPI 仕様書のファイルを出力できます。
OpenAPI 仕様書のファイルを出力する csproj の設定例 | |
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ブラウザーで OpenAPI 仕様書を表示する設定⚓︎
ブラウザー上で確認できる Web API の仕様書の出力設定を変更します。 開発環境でのみ、 OpenAPI v3 の仕様書をブラウザー経由で参照できるように設定します。 設定方法の詳細は、以下を参照してください。
Web API 仕様書をブラウザーから確認できるようにする設定例
ブラウザーから Web API 仕様書を確認できるようにするためには、 OpenAPI v3 仕様書の出力設定と、 Web UI の設定が必要です。 ASP.NET Core Web API プロジェクトの [Program.cs] または [Startup.cs] に、以下のように実装を加えてください。
OpenAPI v3 仕様書の出力設定 ( Program.cs ) | |
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Web UI の設定 ( Program.cs ) | |
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例外ハンドリングの設定⚓︎
サーバー処理内で発生する例外に対処する共通的な設定と実装を追加します。
未処理例外のエラー情報を返却するコントローラークラスの作成⚓︎
キャッチされなかった例外の情報を返却するために、エラー情報を取得できるコントローラーを追加します。 エラーレスポンスは RFC 9457 (日本語訳付き ) に従った形式で返却するようにしましょう。
本番環境ではアプリケーションの内部情報流出を防ぐため、スタックトレースを返却しないようにします。 開発環境ではエラーの詳細を簡単に開発者が把握できるよう、スタックトレースをエラーレスポンスに含めることを検討しましょう。
システムエラーのエラー情報を返却するコントローラー実装例
システムエラーのエラー情報を返却するためには、未処理例外の情報を取得し、適切な形式に変換するコントローラー ( この例では ErrorController
) を作成します。 このコントローラーは、 RFC 9457 (日本語訳付き ) に従ったエラーレスポンスを返却するように実装しましょう。 ControllerBase.Problem
メソッドを利用すると、 RFC 9457 に準拠したレスポンスを簡単に構築できます。
開発環境で使用するアクションメソッドと、それ以外の環境で使用するアクションメソッドは分割して定義しましょう。 開発環境で使用するアクションメソッドでは、スタックトレースをレスポンスに含めるように実装します。
開発環境で使用するアクションメソッドは、安全のため開発環境以外の場所で呼び出しても動作しないように実装しておきましょう。 実装例のように、開発環境以外の呼び出しには HTTP 404 を返却するのが最も簡単です。
ErrorController.cs | |
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未処理例外発生時の例外ハンドラーを設定⚓︎
未処理の例外が ASP.NET Core のランタイムまで到達した場合、先ほど 作成したエラー情報を取得できるコントローラーを呼び出すようランタイムを構成します。 開発環境ではスタックトレース込みのエラー情報を返却する処理を登録します。 それ以外の環境ではスタックトレースを返さない処理を登録します。
例外ハンドラーの登録例
先ほど 作成した ErrorController
を例外ハンドラーとして使用するように構成します。 環境に応じて、登録する例外ハンドラーを適切に設定しましょう。 ASP.NET Core Web API プロジェクトの [Program.cs] または [Startup.cs] に、以下のように実装を加えてください。
例外ハンドラーの設定 ( Program.cs ) | |
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Web API コントローラーのエラーレスポンス形式の指定⚓︎
Web API コントローラーが返却するエラーレスポンスの形式は ProducesResponseType
属性の Type
パラメーターで明示的に指定します。 Type
パラメーターに typeof(ProblemDetails)
を指定することで、RFC 9457 (日本語訳付き ) に従ったエラーレスポンスを返却します。
また、実際のレスポンス形式と OpenAPI 定義書に記載のレスポンス形式の不一致を防ぐため、 Program.cs
で ApiBehaviorOptions.SuppressMapClientErrors
を true
に設定します。 SuppressMapClientErrors
の既定値は false
であり、この場合エラーレスポンスの型を指定しない限りエラーは自動的に ProblemDetails
にマッピングされ、 OpenAPI 定義書にも反映されます。 しかし、この設定が有効になるのは Web API コントローラーの範囲であり、たとえば Program.cs
でインジェクションした外部サービスの機能が自動的にエラーを返却する場合等は ProblemDetails
の形式になりません。つまり、 OpenAPI 定義書と実際に返されるエラーレスポンスの形式に差ができてしまいます。これを防ぐため、 ApiBehaviorOptions.SuppressMapClientErrors
を true
に設定し、 ProblemDetails
への自動的なマッピングを停止します。
エラーレスポンス形式の設定例
ApiBehaviorOptions.SuppressMapClientErrors
を true
に設定します。
Program.cs | |
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ProducesResponseType
属性の Type
に typeof(ProblemDetails)
を指定します。
SampleController.cs | |
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HTTP 400 時のログ出力⚓︎
Web API から HTTP 400 のレスポンスを返却する際、問題の原因となった入力値の情報をログに記録しましょう。 入力値検証などのエラー情報をサーバー側でロギングでき、障害発生時の追跡性を高めることができます。
HTTP 400 の場合ログを出力する実装例
ILogger
を使用して、 ModelState
の情報をログに出力するよう構成します。 HTTP レスポンスは、 ASP.NET Core の既定の実装を使って返却するようにします。 ASP.NET Core Web API プロジェクトの [Program.cs] または [Startup.cs] に、以下のように実装を加えてください。
HTTP 400 時のログ出力設定 ( Program.cs ) | |
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HTTP 通信ログの出力⚓︎
Web API アプリケーションの入出力は、 HTTP 通信の形式になります。 実際の開発作業では、意図した通りの HTTP リクエスト / レスポンスが送受信できているか確認することがよくあります。 これをサポートするため、開発環境では HTTP 通信ログを出力するよう設定することを推奨します。
設定したら、開発環境の ログレベルの設定 をあわせて実施するようにしてください。
HTTP 通信ログを出力する実装例
HTTP 通信ログの出力は、 ASP.NET Core のミドルウェアを用いて実現します。 通常開発者がログ出力処理を記述する必要はありません。 開発環境でのみ HTTP 通信ログが出力されるよう ASP.NET Core ランタイムを構成します。 ASP.NET Core Web API プロジェクトの [Program.cs] または [Startup.cs] に、以下の 2 つの実装を加えてください。
HTTP 通信ログ出力設定 1 ( Program.cs ) | |
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HTTP 通信ログ出力設定 2 ( Program.cs ) | |
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ログレベルの設定⚓︎
ソースコード内で ILogger
を用いてログ出力を行っても、ログレベルを正しく構成しない限りログ出力は行われません。 ASP.NET Core Web API プロジェクトを作成した際、一緒に作成される [appsettings.json] および [appsettings.Development.json] ファイルに対してログレベルを設定します。 ログレベルの設定方法については、以下を参照してください。
ログレベルは、本番環境向けの設定と開発環境向けの設定を別々に管理します。 本番環境向けには原則 Information 以上のログのみを出力するように設定します。 開発環境向けには、アプリケーション内で出力するように設定したログがすべて出力できるように設定します。
基本のログ構成例
本番環境向けのログレベル設定は、 [appsettings.json] に行います。 Information レベル以上のログを出力するように設定しましょう。 ただし、 Microsoft.AspNetCore
のカテゴリーについては、 Warning 以上のレベルのみ出力するようにします。
開発しているアプリケーションから出力するログのログレベルも、明示的に設定しておくことを推奨します。 例のように、 LogLLevel
要素にソリューション名と同名のキーを追加し、値としてログレベルを設定します。 通常は Information を設定しましょう。
appsettings.json | |
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開発環境向けのログレベル設定は [appsettings.Development.json] に行います。 開発環境では、開発者が設定したデバッグレベルのログも出力できるように設定します。 例のように、 LogLevel
要素にソリューション名と同名のキーを追加し、 Debug を設定します。
HTTP 通信ログを記録するように設定した場合は、そのログが出力されるよう個別に設定を追加します。 例のように、 LogLevel
要素に Microsoft.AspNetCore.HttpLogging のキーを追加し、 Information を設定します。
ヘルスチェック 実行時のログを出力する場合も個別に設定を追加します。 例のように、 LogLevel
要素に Microsoft.Extensions.Diagnostics.HealthChecks のキーを追加し、Debug を設定しています。
appsettings.Development.json | |
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CORS (クロスオリジンリソース共有)環境の設定⚓︎
Web API を公開するオリジンと、呼び出し元となるクライアントスクリプトを公開するオリジンが異なる場合(クロスオリジン)の設定は、こちら を参照してください。